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第7回 DX 組織

DXの船に誰を乗せるか?

図表:当連載の全体構成 ※〇数字は連載回

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 コロナ禍の中で、約4ヶ月近くに渡る連載も、最終回です。今回は、ひょっとすると、読者の皆さんにとって最も関心のあるテーマかもしれません。

DXの構想も描いた、推進組織も作った。
しかし、では誰にDXの推進を委ねるのか?

 真摯にデジタル変革を勤しむ企業でも、最後に行きつくのは人の問題です。一見、デジタル人材そのものでありそうな、CIOや情報システム部門ですが、システム部門は社内システムの構築や運用(にかかるベンダーマネジメント)に長けた組織であり、ビジネスを根本的にデジタルの力で変革するプロとは、まったく別です。では、現実的に日本企業がデジタル変革を力強く推進するため、どうすれば良いのか?
 私の経験から、日本のリアル企業が取るべき実践的な解を、「べからず集とべき集」にしてお伝えします。

図表:DX 組織 DON’Ts & DOs

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DX組織 DON’Tsべからず集

[DON’Ts1] 闇雲に、既存社員にデジタル研修を始める

 古くは英語、少し前だと中国語、そして最近はデジタルマーケティングやプログラミング」、そんなノリで、人事教育部門は流行りものスキルに飛びつき、自社社員向けの教育研修を始めがちです。
 第1回目の記事で、

「現在、世界中で有能なデジタル人材の獲得競争をして、Sクラスの人材が切磋琢磨しながら、デジタルによる既存ビジネスの刷新(破壊)、創造を仕掛けている、オリンピック、ワールドカップのような闘い」

と書きました。
 大企業社員が仕事をしながらデジタルのお勉強をしている間に、デジタルSクラス人材は、呼吸するようにコードを書き、本能のままにデジタルサービスを描き、さっさと容赦のない破壊的サービスを世に打ち出してしまいます。片手間の人材研修でデジタル人材を育成しようと言うのは、デジタルアスリートの世界に、空手通信教育で今から乗り込もうとしているようなものです。

[DON’Ts 2] とりあえず中途募集をして、デジタル人材を採用する

 私が三菱商事を辞めた7年前は、社内でもなかなかな騒動になりましたが、気づけば、多くの日本企業でも中途採用が、珍しいものではなくなってきました。しかし、
「我々の会社には、デジタル人材がいないから、外から集めろ」
と号令がかかっても、そもそも優秀なデジタル人材が採用できず、“デジタル風な人”を採ってしまったり、せっかくデジタル人材を採用できても、社内で活躍できずすぐに辞めてしまうケースも散見されます。(某大手企業人事部の方は、「デジタル人材は、中途採用しても、すぐ辞めてしまうから、デジタル人材は自社養成する」と言っていたぐらいです・・・。それが困難なことは前述の通りです)
 この真因は、日本企業の多くは、「新卒一括採用&入社後配属」と同じ意識のまま、中途採用の募集にあたって、事細かな職務内容の規定(ジョブディスクリプション)ができず、とりあえず“デジタル風な人”を採用してしまうことにあります。運よく、せっかく有能なデジタル人材が入っても、
「聞いていた職務と違う。まして権限がこんなにないとは思わなかった」
と言うケースも少なくありません。

DX 組織 DOsべき集

 では、まともなデジタル人材の自社育成も中途採用も難しい中で、いかにして短期的にデジタルの能力を自社に蓄積して行けば良いのでしょうか?

[DOs1] TOPエキスパートをアドバイザー起用し、OJTによるスキル向上、仕組化を進める

 実は、ファミリーマートで私自身が実践し、そして多くの企業の方にもお薦めしているのが、社内では知見のない分野について、外部から一線級のアドバイザーをピンポイントで起用することです。

図表:デジタルエキスパートの例

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 間違ってはいけないのは、必要な領域ごとにピンポイントでTOPエキスパートを起用することで、どこか1社に全部を丸投げすることではありません。
 デジタルと言っても、アプリケーション一つを取っても、UIUXからシステム構築、獲得策、アクティブ率向上策など、はっきり言って別の五輪種目と言えるぐらい、まったく別の競技です。1人で全てできる人など、当然、存在しませんし、何より一線級のプロを全領域でかかえる会社に、私はお目にかかったことはありません。(ちなみに、私がファミマでお力添え頂いたのは、デジタル日本代表のようなTOPエキスパート達でしたが、1名を除くと、誰も大組織には所属せず、自分の会社やスタートアップ企業との兼業でした)
 さらに、TOPエキスパートを起用したからには、自社スタッフを全力で併走させて、実践の中で一挙手一投足を吸収させる、また一度、こなした業務は、可能な限り仕組化して、他の自社スタッフでも廻して行けるようにするという、自社側のデジタルチームの層を厚くして行きます。
 ファミマのアプリFamiPayでは、エキスパートに並走頂いたのは立ち上げまでの半年程度で、そこから開発や一部の特殊運用を除いて、まったくのデジタル未経験のスタッフが(と言うか、全員、デジタル未経験者だったのですが・・・)、完全自走できるようになりました。

[DOs2] 外部デジタル人材を迎えるため、人事制度を刷新する

 エキスパート併走による立ち上げ方もありますが、理想はやはり外から有能なデジタル人材を集めるのが王道です。特にエンジニアリソースを内製化できるかは、今後の自社のデジタル領域の機動力を大きく左右してしまいます。
 しかし、前述の「べからず集」でも書いたように、新卒一括採用を前提とした、日本企業の旧来の人事制度が、弾力的なデジタル人材採用の大きな足かせになっています。DX組織を立ち上げる上で、人事制度が巨大なブレーキになっている会社を、いくつも目にしてきました。
 今、有能なエンジニアを始め、デジタル人材は世界中で引く手あまた、取り合いになっています。その人たちに、従来規則に基づく、定時の就業時間、年齢ベースの基本給の設定、プロパー社員と同列の評価・昇進を押し付けても、すぐにいなくなってしまうだけです。いや、そのような空気を嗅ぎ取っただけで、入社面接にすら来てくれなくなってしまいます。
 日本企業では、人事領域は聖域化されがちですが、新卒採用されたプロパー社員への気遣いをして、DXの前に人事制度の刷新一つできない企業に、DXなどはるか先の夢物語です。

最後にどうしてもお伝えしたいこと 
「企業の存在意義 パーパス」

 さて、全7回に渡って、私自身がキャリアの多くので、全身全霊をかけて取り組んできたデジタルトランスフォーメーション、このDXの実践者だからこそ見える心象風景からの示唆を、お伝えして来ました。そんな中で、時に思い悩むのが、
何のために、誰のために、DXをするのだろうか?
と言う、根源的な問いです。
 と言うのも、DXを突き進めた先の世界では、現在の事業とは、顧客基盤、お取引先は変わり、何よりも、今いる社員がいらなくなってしまう可能性すら十分にあります。お客様も変わり、お取引様も変わり、大切な社員まで入れ替わってしまう。それは、もはや元の会社とは、まったく別の会社です。
 いや、そもそも、トランスフォーメーションとは、「変容/変態」です。蛹が蝶になるような、生物としての構造的な変容がなければ、トランスフォーメーションではないのですから、別の会社になっていて、然るべきなのです。
 しかし、会社が、そんな別の生命体に変容してまで、生存を続ける必要がどうしてあるのでしょうか?
 私は、その答えは、企業の存在意義、世界的な経営アジェンダになっている表現を使えば「パーパス(Purpose)」に行きつくと考えます。姿形は変わっても、企業の存在意義を未来に残す価値があるからこそ、その企業は永続を許されるのです。

 これからDXの長い旅 ― その本当の出発地は、デジタルの未来とは真逆の、むしろこれまで企業が紡いできた歴史の中で、売上や利益や株価などを削ぎ落して残る、その会社が社会の中で存在してきた意義を、しっかりと再発見することにあります。


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第1回 DX幻想を叩き斬る 前編
第2回 DX幻想を叩き斬る 中編
第3回 DX幻想を叩き斬る 後編
第4回 DXの旅
第5回 DX ROADMAP
第6回 DX DRIVE

植野 大輔(Daisuke Ueno)
早稲田大学政治経済学部卒、商学研究科博士後期課程 単位満了退学。三菱商事(情報産業グループ)に入社、在籍中にローソンに約4年間出向。ボストンコンサルティンググループ(BCG)を経て、2017年1月ファミリーマートに入社、改革推進室長、マーケティング本部長を歴任の後、デジタル戦略部長に就任。デジタル統括責任者として全社デジタル戦略の策定、ファミペイの垂直立上げ等のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導。2020年3月、DX JAPANを設立。

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DX JAPAN代表の植野大輔氏が、三菱商事、大手コンビニ、外資系大手コンサルを経て、ファミリーマートに入社、デジタル統括責任者として全社デジタル戦略の策定、ファミペイの垂直立上げ等のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導した経験から、DXの実状とあるべきDX実践についてお伝えします。

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