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第2回 自分の中で大切な価値観は早めに気づこう

今回、キャリア論についての連載です。テーマは「時代とともに変化させる、2軸で考えるキャリア論」ですが、時系列に沿ってどんな軸を見つけて、そしてどんな軸を考えながら進めば良いのか進めて行きたいと思います。

大学時に考える(た)こと

大学は鹿児島大学で大学院まで在学し学部は工学部でした。専攻は建築構造学。研究対象は大空間やRC(Reinforced Concrete)です。RCシェル構造のドームの破壊実験したり解析したり、RCで柱梁作って破壊実験したり解析したり。6年間どっぷり建築生活でした。就活は就活氷河期の最後の時期なので、ほとんど就職先はありませんでした。

印象的だったのは、入学した際の最初のオリエンテーションで教授から「建物が建たない時代に建築を先行するなんて馬鹿だぜ」と一蹴されたのを覚えてます(そういう言い方がまだ許容されてた時代です)。

在学中はまさに1990年代中盤~2000年代前半の第3次ベンチャーブームで、大学内にも産学連携のベンチャー創出支援機関ができたりと、鹿児島ではインターネットやテレビの向こうで刺激的なことが日々見える状態でした。

2001年にはアメリカ同時多発テロ事件も起き、建築のあり方を考えさせられ、また、いろいろな価値観が日本だけでなく世界中で大きく変化した時期だったと思います。

そんな中私もベンチャーやってみよう的な学内組織に所属し、日々サークル的な感じでワイワイとやっていました。そんな中で建築外での価値観に触れながら過ごしていました。建築内だけでどっぷりと過ごすのも良いのですが、建築こそ総合的な分野です。アートもあれば歴史もあるし、科学的なところもあれば物理的な力学の話もあるジャンルです。様々な価値観に触れることが重要なのは分かっていたので、コミュニティーをあえて建築外に持つようにしていました。

すると、そこで知り合った友人に「見るべきはグローバルであり、海外でも活躍できないと。」と言われます。その彼とはキャリアについてあれこれと夜な夜な議論しましたが、結論、このままだと井の中の蛙に陥るぞと。そんな彼から誘われたのがアメリカのPE 、すなわちアメリカのProfessional Engineer取得です。とはいっても、いきなりは受験できないので、一次試験であるFundamentals of Engineering試験(FE試験)からになります。2人で受験する事になりました。

結果、一緒に受けた友人は落ちて私だけが合格しました。その際の試験で特徴的だったのが、設問に倫理観を問う内容も項目として設定されていて、やって良いこと悪いことなどを問う内容もあったことです。当時、建築士試験の内容も知っていたので、倫理観を問うというのには驚きました。

就活自体は結構悩みました。当時はバブル経済がはじけた事による数年続いた就職氷河期を抜けるか抜けないかの時代です。建築を専攻したのに、建築領域で設計が出来る就職先がほとんどないのです。あって教授推薦の組織事務所か地元の個人事務所、それかゼネコンの現場かSEかというほんと少ない選択肢でした。とにかく選択肢が少ないので、ここでの選択次第でその後の数年間、修士まで進学していたので20代の過ごし方がかなり変わるのは明確でした。

そこでまずそこで考えたのが、どのルートをたどれば最短で経験したいことを経験できるか、です。

ベンチャーや建築以外の可能性も考えたいが、当時の目の前の求人状況だと建築以外の選択肢はなく、また、新卒で建築外に入ってしまうと、設計事務所など専門性を問われる建築の仕事にはどれないだろうと。

となると、一旦は建築を選択しておいて、その後その時の状況で考えるという意思決定をしました。

そして建築設計事務所へ入社します。

自分だけのポジションは早急に見つけること

設計事務所に入社しましたが、組織系の事務所だったので事業所も多く、まずは本社配属となりました。いきなり設計に携わることはなく、まずは社内業務の環境を整えるという、言わば経営企画の末端みたいなところからスタートでした。大学時代からインターネットには触れていたので、今のslackの走りみたいなツールを導入したり、アナログな仕組みだったのを少しずつデジタル化したりしていました。これも社内にやれる人間がいなかったから回ってきた仕事です。

また、入社半年くらいしてからチームに求められるミッションも変わり、特殊物件と言われる超高層マンションや免震構造物の設計チームとしても機能することになります。その際、部分的な設計ではあるものの、有限要素解析(難しい!)という学生時代に経験してる方も少ない解析手法での解析を大学時代に解析で研究をしていた事から担当することになりました。なので、たまに2次部材と言われる簡単な小梁や床の計算(設計)をしながら大規模な有限要素解析をするというなんともアンバランスな事をやらせてもらっていました。

この有限要素解析は、大学時代に研究していたことがそのままハマったケースです。

私の場合は結果論としてそのポジションに収まりましたが、誰もやれる人がいない、かつ、レアなことができれば、キャリアが若くてもそのポジションにつけることをこの時知りました。

社会的事件が起きた

そうして新卒2年めも過ぎたあたりで社会に激震が走りました。俗に言う「姉歯事件」、構造計算書偽造問題です。

毎日のようにテレビ番組は報道し続け、多くの建築のルールを変えるきっかけにもなった事件です。お客様からも当時設計中の物件について問い合わせがあったり、当時の上司にも耐震偽装の対象となった物件の改修/補強の相談があったり、当時の事務所で手掛けた過去の物件の再チェックが相当数来たのを鮮明に覚えています。

問題となった物件について、建物重量を軽くするために最上階を破壊しようかとか、中層〜下層階にて柱を切断して面制振装置入れようかなど、いろんな話がアイデアベースで出ていましたが、まだまだ新米の設計担当から見ても、対象となった物件の設計はありえないし見抜けないほうもどうなんだ?と思えるものでした。

日本の構造設計は相当安全側で設計基準を設けてますが、基準を守らないのは法的にNGです。そもそもやってはいけないことをやること自体がクライアントやその建物にその後も関わる人にとって不幸にする行為でしかなく、事件の背景は報道等を見ればわかるものの、やはりエンジニアとして守らないといけないものは絶対に守らないといけないと当時強く思ったこと覚えています。

点と点が線になり、今の価値観に気がつく

そんな中私自身は次のステップを考え出していました。すなわち、3年前の就職時に考えた建築でそのまま行くか建築外ベンチャーに行くかどうかです(当時は建築領域でベンチャーが見当たらなかった)。

当時はまだ石の上にも3年という言葉がまだ当たり前とされてた時代です。それを愚直に守って、3年経ったら次に移ると考えながら動いていました。建築にどっぷり浸かりながらもどんな新しい動きがあるのかはネットや知人を通じて調べていました。いろんな方にお話をお伺いに行きながらいろいろな方にお会いし、そういう社会的事件を目の当たりにした際に思い出したのが、学生時に受験したFE試験です。

海外は倫理観を問う問題が存在するということは、「やっていいこと・悪いこと」を答えられる教育をしてるのだろうなと。そしてきちんと倫理観を身につけた人間がエンジニアとして活躍出来るのかなと思い、では今回の事件はなぜ起きたのだろうか?と考えるようになりました。

その時気がついたのは、教育は大事だなということです。いろんな教育があるものの、じゃあ、高校の受験を対象とした学習の中で社会的に良いか悪いかを問うようなことや、大学の教育でもあったかと考えると、善悪は当たり前のものとして捉えられるもしくは家庭教育の中で済ますものになっているので、実際教育現場ではないなと。ここに課題があるかもと考えたのです。

そして、もう一つは、そんな気づきを経て、課題解決の大切さに気が付きました。今回の事件も多くの関係者がいろいろな課題を前にして、結果起きたのだろうと。その課題を解決できていたら、こんなことは起きなかったのでは?と。世の中は課題だらけですが、その課題を小さくても1つ1つ解決していけば、ちょっとずついい世界になるんじゃないか、まさに課題解決自体をベースにおいた事を仕事にしていきたいなと思ったことです。

この時に、大学時代に感じたことと社会人になって感じた自分なりの違和感とその結論が結びついたかと思います。

そして2社目を決定しました。いろんな会社さんとお会いさせて頂き、インターネット×教育の会社にお世話になることになります。

当時、僕が辞める事を告げた上司からはもう一度設計をチャレンジしてみないか?徹底的に育てるぞ?と打診もありましたが、ありがたく受け止めつつ、より大きな枠組みで世の中を渡ってみたいと思い、丁重にお断りさせて頂きました。

基本の軸をまず見つけることが重要

これ以降、いろんな会社やビジネスに携わることになりますが、今でも「課題解決」というのを自分の中のメイン軸においています。

若手の方々のキャリアについてのお話を聞いていると、キャリアが職種軸だったり業界軸になっていることをよく耳にします。
それはそれでステップアップとしては悪くないとは思いますが、自分にとっての中心価値観に気がつくと、より動きが変わってきたり、仕事を選ぶ際の俯瞰の仕方が変わると思います。

皆さんの根幹となっている軸は何ですか?ちょっとだけでも考えてみて下さい。

★この著者の記事
 第1回 時代とともに変化させる、2軸で考えるキャリア論
 第3回 基礎力から出来ることをまず1つ作って強みに昇華する
 第4回 一旦はキャリアを捨てて新しいことにチャレンジすべき
 第5回 想定外の事が起きる可能性に備えておく
 第6回 名刺となる事例を作る。
 デジタルシフトの時代に必要な「編集力」をつけるために

北野 博俊(Hirotoshi Kitano)
建築構造設計から教育系人材、不動産ベンチャーを経て株式会社ベーシックにてマーケティング部立ち上げを経験。現在、株式会社RRデジタルメディア執行役員、また、傘下の株式会社fluxusにて執行役員、株式会社sotokoto onlineにて取締役及びオンラインディレクター、グループ全体のデジタルシフト、新規事業推進を担当。
◆twitter: https://twitter.com/hirotoshikitano
◆note: https://note.com/kitano_h

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