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第3回 心理ロイヤルティの構造化 その1

 第2回では、デジタルシフト時代のマーケターの業務は、ファネルマネジメントからロイヤルティマネジメントへ変革する必要があることを解説しました。第3~4回では、心理ロイヤルティの構造化と定量化について解説します。
 ここからは、断りなしにロイヤルティという場合は、心理ロイヤルティのことと考えてください。

ロイヤルティは数多くのロイヤルティドライバーの満足から形成される

 ロイヤルティは、お客様の企業や商品への愛着度合いです。そして愛着度合いは、お客様と企業や商品の関係で生じる数多くの顧客満足で高まっていきます。

 魅力的な商品のデザインがお客様を虜にするケースもありますが、このケースでは「いろいろな満足の中で、ロイヤルティに大きく影響しているのがデザインの満足である」と判断されます。もちろんデザインだけでなく商品の機能や店舗での接客などもロイヤリティを高める一因となります。

 この数多くの顧客満足の要因をロイヤルティドライバーと呼びます。すなわち、ロイヤルティは数多くのロイヤルティドライバーの各々の満足から形成されて、そのロイヤルティへの影響力の大きさはロイヤルティドライバーによって様々です。

 そして数多くあるロイヤルティドライバーは、以下の図のように基本価値と体験価値に分類できます。

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 基本価値とは商品そのものの価値で、ロイヤルティを高める必要条件です。小売業で言うと、品揃えや商品の品質、機能、デザイン、価格といった項目です。クラウドサービスでは、プロダクトの先進性や機能性、操作性、カスタマイズ性といった項目です。つまり、お客様に提供する商品を磨き上げ、顧客満足を高めることで基本価値を向上させます。

 体験価値とは、お客様が商品を選択して購入し使用するプロセスで生まれる価値です。一般的にいわれるカスタマーエクスペリエンスの向上とは、この価値を向上させることを意味しています。小売業では、企業や商品の情報収集、購買体験時の店舗接客や支払処理、ネットでの商品閲覧、商品使用時のサポートサービスといった項目です。クラウドサービスにおいては、導入時の打合せ、システムの設定、運用時のテクニカルサポートやトラブル対応といった項目です。つまり、お客様の商品購入や使用を手助けするサービスプロセスを磨き上げ、顧客満足を高め、体験価値を向上させます。

 ロイヤルティの向上には基本価値、体験価値ともに大切ですが、最近では、体験価値の重要性が大きく取り上げられるようになりました。基本価値を高めるとは、平たくいえば「良いものを安く提供することで顧客満足を高める」というモノ提供型の取り組みです。基本価値は商品購入の意思決定には大きく影響しますが、愛着の育成というロイヤルティ向上には至りません。圧倒的な安さでお客様を虜にして、ずっと買い続けていただくという戦略はロイヤルティ向上戦略とは一線を画しているということです。次々と新商品をリリースし、低価格を売り物にするだけでは、高いロイヤルティを確立することはできません。

 そこで、「モノからコトへ」、すなわち体験価値によるロイヤルティの向上が肝要となってきます。商品を購入するプロセスにおいて、お客様に寄り添ったサポートをすることや、商品を使用する際に価値のある体験を感じてもらうサポートなどで顧客満足を高めて体験価値を向上させていきます。この体験価値の向上は、次回以降の商品やサービスの購入時の意思決定に大きく影響し、愛着を高める要因としてきわめて重要です。つまり、基本価値を磨くことよりも、体験価値を磨く方がロイヤルティ向上には有効ということです。

ロイヤルティドライバーの満足には「頭の満足」と「心の満足」がある

 基本価値や体験価値の向上は、各ロイヤルティドライバーの満足を高めることで実現できます。この満足は「頭の満足」と「心の満足」の2種類の満足に分解することができます。

 頭の満足とは、各ロイヤルティドライバーを論理的に評価した満足のことです。心の満足とは、各ロイヤルティドライバーに感情的に感じている満足のことです。いい換えれば、該当のロイヤルティドライバーがどれだけ心に響いたかを判断する指標です。

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 ロイヤルティとは、お客様の企業や商品への愛着度合いです。これを高めるためには各ロイヤルティドライバーの「頭の満足」と「心の満足」とのそれぞれを高める必要があります。論理的に納得した高い満足と心に響く高い満足を提供することが、ロイヤルティを向上させるための重要な活動となります。

 とりわけ、「心の満足」は重要です。人間関係で、この人と永くつきあっていきたいと思う気持ちと一緒です。この人は仕事ができる、かっこいい、年収が高い、いい企業に勤めている、知識レベルが高い、といった論理的に判断できる要素は一時的に関係性を持つべきかどうかを判断する理由にはなりますが、永くつきあうための十分条件にはなりません。会っているとなぜか安心する、この人とは気軽に話せる、いつも心遣いを感じて好感がもてる等、心から気に入った理由が永くつきあう条件になるのではないでしょうか。お客様と企業の関係も同じです。ロイヤルティが向上する、つまり愛着度合いを向上させるためには、感情的に感じる満足、「心の満足」を向上させることが大切です。

 また、ロイヤルティドライバーによって、「頭の満足」と「心の満足」のレベルは異なります。各々の満足レベルを把握すると、ロイヤルティ向上への施策が見えてきます。たとえば、アパレル店舗の「試着」では、ロイヤルティドライバーの「頭の満足」レベルは低いけれども「心の満足」レベルは高いといった具合です。また、それぞれの高低が逆の状況もあります。こうした「頭の満足」レベルと「心の満足」レベルを把握すると、様々なロイヤルティドライバーのロイヤルティ向上の施策が見えてきます。

 これで、ロイヤルティの要因となるロイヤルティドライバーの構造化ができました。次回はさらにロイヤルティドライバーの満足の要因となる顧客体験の構造化について解説します。

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第1回 マーケティングの真のデジタルシフトとは? 
第2回 ロイヤルティマネジメントの重要性
第4回 心理ロイヤルティの構造化 その2
第5回 心理ロイヤルティの定量化と分析

渡部 弘毅 (わたなべ ひろき)
ISラボ 代表

1985年日本ユニシス入社、2000年日本IBM、2005年日本テレネットを経て、2012年にISラボ設立。一貫してCRM分野に関わり、プロダクトマーケティング、業務改革コンサルタント、事業企画を経験。現在はロイヤルティマネジメントのコンサルティング活動中。日本オムニチャネル協会、情報処理学会、コールセンタージャパン等、複数の研究会のリーダーを務め、定期的に数多くのセミナーの講師を担当している。
著書:『お客様の心をつかむ心理ロイヤルティマーケティング 「心の満足」と「頭の満足」を測り、科学的にロイヤルティを高める手法

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CRM分野でキャリアを重ね、プロダクトマーケティング、業務改革コンサルタント、事業企画を経験し、現在はロイヤルティマネジメントのコンサルタントとして活躍中の渡部弘毅氏が、デジタルシフト時代においてマーケターが取り組むべきことに関して解説していきます。

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