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第4回 商品、販促部隊と会話する

本社で最も協力しあうべき部署

 情シス、店舗販売、ECとのコミュニケーションを重ねて、あなたの手元の資料と情報は飛躍的に増えて、人の繋がりも増えてきたでしょう。何かを知りたいと思ったら、相談したり聞きに行く相手もバイネームで見えてきたと思います。
 そこで次は、本社の中でも現場に近い、商品部門と販促部門に行きましょう。前回、本社部門は現場を理解していないと書きましたが、より正確には、現場の悩みを把握しきれていない、だと思います。本社も現場も会社を悪くしよう、と思っている人はいませんよね。それが部分最適か、全体最適か、だけの違いなのです。あなたは初回に会社全体を数値で見える化し、顧客の立場で語れる準備をしたはずです。その全体最適の観点から本社と現場の関係を整理しましょう。
 本社の中でも、商品部隊は商品部門ごとの獲得売上と粗利益で評価され、販促部隊は獲得売上と販促費用対効果のコスト管理の中で評価されます。両部門とも年間で52週計画を立て、それに基づいて商品と販促の施策を実行するので本来は連携しているはずなのですが、お互いの評価がうまく連動しておらず、協力関係が出来ていない事が多いのです。

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 共通点は販売現場の協力があって初めて52週計画が実行できる事、相違点は売上という指標を持ちながらも、商品販売実績で作るのか、客数を集めて結果として売上を作るのか、という二つに分かれてしまっている事です。

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 商品部隊の課題は、商品販売実績と顧客の関係がタイムリーに見えておらず、商品部門ごとの売上前年比で追うしかない事です。ID-POSで会員購買履歴が取れていたとしても、購買商品の商品マスタとカテゴリ分類がきちんとなされ、経年変化の中で分析出来る状況になっていなければ活用出来ません。また店舗とECというチャネルの異なった売り場を顧客という視点で結び付けて分析したいのですが、それにはさらに部署の壁を超えていかなければなりません。 
 販促部隊の課題は、チラシや店舗販促物の具体的な効果、ネット販促との相乗効果が見えていない事です。顧客が販促情報を見た事で来店したのか、それとも定期的な来店時にたまたま販促情報が重なったのかも見えにくいものです。そのためには顧客が持つ自社ポイントカードや、Tカードなどの他社共通会員カードでIDを識別し、自社サイトやアプリでの検索、メール情報のクリックなどの情報と紐づけたり、継続的な購買行動を見える化する必要があります。
 あなたが情シスとの間に入って、商品マスタとカテゴリ分類を現状に合った区分に整理し、商品単品のJANコードとカテゴリコードの紐づけがきちんと出来たら、基本的な商品/カテゴリごとの購買分析が出来るでしょう。
 そして同様に、会員データベースの必須項目と付加項目の再定義に基づいて整理し、より正確な顧客ごとの属性分類が出来たら、顧客のペルソナが仮説ではなく事実から見える化出来るようになります。

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 この二つが結びつくと、新規顧客が初めて購入する商品とカテゴリ、2回目に購入する商品とカテゴリが見えてきます。一方で既存顧客が同年度内もしくは経年の中で継続的に購入する商品とカテゴリも見えてきます。さらにその商品と同時に購入する商品とカテゴリ、前後の購買で購入する商品とカテゴリも見える事で、仮説のカスタマージャーニーではなく事実の見える化が出来るようになります。

現場と近い本社の悩みを知り、改善する

 商品部、販促部ともに販売現場とは密接な関係にあります。これまでは商品部の中のさらに部門単位で店舗とやり取りしようとしたり、販促部が商品とは別にチラシや販促プランの話をするので、販売現場はずっと本社内で情報共有して統一した業務指示を出して欲しいと思っています。本社の各担当からは1対1の関係に見えても、販売の現場からしたら、本社の何人もの担当者からの多数対1の関係なのです。
 今回、情シスと商品部、情シスと販促部、そして商品部と販促部をつないでマスターデータベース情報から整理して分析し、協力関係を生み出せたとしたら、販売現場が望む商品部・販促部が話し合って統一の業務指示書を送る事が出来るように変われるでしょう。
 当然、販売現場との関係も変わり、より良い関係が築けたら様々な事が改善されていきます。
 例えば商品では、店舗発注と本社発注が交錯し、過剰在庫になったり、逆に欠品する事も多かったでしょう。それが店舗ごとの既存顧客と商品カテゴリの組み合わせで分析出来、いつどんなものが売れるのか、その必要量はどれくらいなのかの基本予測が出来ます、そこに販促施策による増売見込がきちんと組み込まれたら、店舗での入荷検品、在庫管理は効率化され、販促施策に重要な店頭での声掛けや掲示物の展開も協力的に行ってもらう事が出来ます。作業が軽減され、販促目的も明確に伝わるからです。きちんと52週計画通りにエンド台の商品展開やPOPなどの販促物の掲示/交換が行われるようになるでしょう。
 これだけでもいい話なのですが、店頭での会員証提示や新規発行なども積極的に行われるようになり、より多くのデータが取れて正確な分析になっていくでしょう。

商品部内業務、販促部内業務の改善

 本社と販売現場との業務改善だけではなく、それぞれの本社内での業務も変わります。
 商品部門はこれまで、仕入れのロット数(発注単位)を大きくすることで原価低減し、粗利の最大化をはかってきました。しかしながら人口減少とともにインバウンドを除くと新規の買い物客が減少し、店舗数の拡大もスピードが落ち、仕入量を増やし続ける事が出来なくなると、リベート交渉などによって利益率を維持する事も難しくなりました。その為、仕入ロットを減らす事が出来ず、粗利率を無理やり維持する一方で社内在庫が増えてしまう現象が起きていました。商品開発も、顧客の声とニーズ分析が十分に出来ず、過去のヒット商品の色違い/サイズ違い/一部デザイン違いなどを増やしてしまう結果になる事が多かったと思います。
 それが実際の顧客購買や検索情報と、商品単品もしくはカテゴリと紐づけて、経年の中で分析する事で本当に常連客に継続的に支持されている商品やカテゴリがわかり、顧客の真のニーズを商品部内で考え、新商品を生み出す事が出来ます。また販売現場に送り出したら終わり、ではなく、企画書の仮説通りに誰に売れているのかをきちんとPDCAで追う事が出来、追加生産するのか、売り切りで次の商品企画に移るのかを判断する事が出来ます。
 これまでは経験値と交渉力で動いてた所に、顧客・購買データが加わる事で、より強い商品部に生まれ変わる事が出来るのです。
 販促部門ではこれまで施策ごと、チャネルごとに見ていた販促施策が、販売チャネルをまたがった顧客の行動が見える化され、マス媒体やネット媒体、店頭販促などをトータルで見える化出来るようになります。会社全体での顧客との販促情報接点を管理/運用出来るようになり、費用対効果が明確に示せるようになります。
 さらに客数における新規と既存の分解、既存顧客の経年にわたる継続行動も見える化出来、ようやく顧客に支持されるロイヤリティプログラムを提供する事が出来るようになります。その内容はこれまでのポイント付与率の話だけではなく、月1回の配送無料や、各種イベントへの招待や新商品/サービス体験など、常連顧客が喜ぶ内容へと変わるはずです。

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 商品部門と販促部門がデジタルシフトによって協力関係を築き上げる事で、大きな全社改善に繋がる事は理解いただけたでしょうか。これだけでも十分改善したと言えるのでしょうが、次はさらなる改善を目指してコスト部門と言われるコールセンターと物流に足を運びましょう。

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逸見 光次郎(Kojiro Henmi)
三省堂書店、イーエスブックス(現セブンネットショッピング)、Amazon、イオン、カメラのキタムラ等で店舗とネット(デジタル)の現場を経験、その融合を推進。 現在はオムニチャネルコンサルタントとして独立。現場から経営まで、継続的な顧客満足と企業利益を重視した全体最適視点の可視化により、デジタル化に悩む小売流通企業の支援している。
著書:『デジタル時代の基礎知識『マーケティング』 「顧客ファースト」の時代を生き抜く新しいルール』(翔泳社)

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