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第2回 最初に話をするのは情報システム

~システムを理解せずには、業務改善もデジタルシフトの推進も出来ない!~

 私はシステムエンジニアでもネットワークの専門家でもありません。しかしこの25年、IT部門と無縁で業務が出来た事などありませんでした。さらに会社を変える推進者になろうとするのであれば、なおのことシステムがわからなければ前に進めないでしょう。

  最初に入社した三省堂書店では、業務そのものは3年間の書店アルバイト経験でわかっていましたが、販売集計システムは初めて見るものでした。当時は販売した書籍のスリップ(本に挟まっている紙)の半券を自動読込機(OCR)にかけて集計していて、毎日店舗でレジを締めた後、半券を束ねて宅配便で本部へ送っていました。つまり販売した翌日にOCRにかかり、その翌日、販売日をN日としたらN+2日後に集計された全社と各店舗の販売データを見る事が出来たのは驚きでした。

 次のイーエスブックス(現セブンネットショッピング)では商品担当だったものの、サイトの立ち上げから関わっていたので、本を検索するロジック構築や、販売データ分析のためのSQLデータベース活用、PhotoshopやDream weaverを使ったサイト制作、出荷/配送などのロジスティクス、代金回収に伴う違算精査や返品業務のためのデータ集計など、新しい業務を覚えるとともに、ITの仕組みやツールの使い方を一緒に覚えてきました。

 イオンでネットスーパーを作った時には、受注システムとしてのECシステムだけではなく、商品/店舗オペレーション/物流/会計といった一連の業務システムについても詳しくならざるを得ませんでした。表面的な運用だけわかっても、システム処理を理解しないとネットスーパーというサービスが動かないからです。生鮮とグロッサリーそれぞれの商品データベースとスケジュール売価、棚割と品揃え、売上計上のそれぞれにシステムがあり、素人ながらまずは業務の絵を描き、一緒にシステムの全体図を書き起こして整理していきました。

 キタムラではこうした経験を活かしてECのリニュアルを行いましたが、初めてアプリを作る機会にも恵まれました。スマホプリントアプリの開発そのものはフェンリル社にお願いしましたが、ネットプリント部長と一緒にフェンリル社のオフィスに間借りさせてもらい、こまめな打ち合わせをしながらJavaを学んだり、APPLE社のアプリ承認における3度のリジェクトに対応した事を思い出します。

~作るのは情シスだが、責任は販売/営業~

 ここまでお伝えしたらどれだけ業務とITが密接に関係しているか、特に新しい何かを生み出したり、既存の仕組みを変えていく時にはITの理解が重要である事はお分かりいただけたと思います。
 そしてシステムを作るのは情報システム部や開発会社ですが、その要件を決めて発注し、利用して利益を稼ぐのは営業/販売である、という事も同様に重要な事です。つまり良いシステムが作れるかどうかは、営業/販売の責任が大きいのです。残念ながらここを情シスや開発会社の責任だと思っている方がどれだけ多い事か。

~自分のやりたい事を絵にしてみる~

 とはいえ、システムの知見がない人がどうやって情シスのメンバーと会話出来るようになるのか心配ですよね。でも大丈夫です。まずは自分のやりたい事を絵にしてみるのです。それも業務部分からで構いません。そしてその中に想定されるITの要素を書き足してみるのです。最初はきっと(図1)のようなものが出来るのではないでしょうか。この絵と、先回整理した“顧客と全社視点で整理した自社デジタルシフトの必要性”をセットにして、情シスメンバーと話を始めるのです。

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 最初は「また新しい取り組み?お守りする仕組みが増えて経費が増えるだけなのでは?」と心配しながら聞いている情シスメンバーも、業務イメージとITの理解が初歩的だけれども出来ていて、全社視点で考えられているのであれば話だけは聞いてくれるはずです。
 そしてその場で教えてもらった事をどんどんあなたの絵に足していくのです。情シスといっても様々な業務部隊がいます。小売であれば、店舗/POS系、財務/経理系、サーバ/ネットワーク系、各種データベース系という感じです。PCやタブレットの初期設定をやっている部隊もいます。十把ひとからげに“情シス”ではなく、ちゃんと組織体制と担当業務を事前に確認・把握してから(図2)、それぞれのチームに相談に行きましょう。

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 こうしてだんだんあなたの描いていた絵も、システム要素が整理されてくるはずです。また相談のたびに、様々なシステム関連の資料を貰ってくるでしょう。こちらはきちんとシステムのかたまりごとに分けて、ファイリングしておきましょう。可能ならデータで後送してもらい、フォルダに整理しましょう。

~システム課題を整理していく~

 システムがある程度階層も分けて整理出来てきたら(図3)、この時点でシステムを中心にした課題リストを作り込みましょう。

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情シスメンバーと話すうちに、彼らの課題もヒアリング出来ているはずです。チーム別の課題と、全体的な課題をリスト化しておき、この後にフローを作る時に活用出来るように準備しておきます。エクセルで整理し、後々の課題管理票に進化出来るようにします。印刷時にA3サイズで読めるものが資料としては使いやすいと思います。

~ビジネスフロー図を書き起こす~

 先に各部署をヒアリングしてからでも良いのですが、私のお勧めは絵を描いて進化させ、情シスとの情報交換が繰り返し出来た時点で、自社の主なビジネスモデルのフローを書き起こす事です。これを私は“ビジネスフロー”と呼んでいます。
 フローのフォーマットは世の中に様々ありますが、私のやり方は縦軸に時系列での業務の流れ、横軸にお客さまを起点に、近い順に販売/商品/マーケなど各組織を社外のパートナー含めて並べていきます。一番右にはシステムの箱を用意します(図4)。

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各組織は組織図の通りに網羅して一旦書き出し、フローに関係ない部署(新規事業や海外部門など)があった場合には非表示にしておきましょう。情シスからの資料には、業務単位の業務フローがあったはずです。そちらも参考にしましょう。書き起こしたビジネスフローは情シスのメンバーにも確認してもらいましょう。これも印刷時にはA3サイズで1~2枚くらいにまとまり、誰もが見た時に、全体の流れが把握しやすい粒度で作る事をお勧めします。

 実はこの作業が一番大変ですが、業務を繋がりできちんと理解するには最適なのです。最初は「面倒だなぁ」と思うはずですが、次第に社内の流れが見えてきて面白くなるでしょう。ここでどこまで業務が理解出来ているか、業務の繋がりが整理出来ているかによって、今後の各部署との相談がうまくいくかどうかに大きく影響します。情シスに絵を見せながら相談して修正していったのと同様、各部署との相談でもこのビジネスフローを元に話をします。何もない状態で話をしても相手に伝わらないのと、こちらの理解レベルが低いまま空中戦になってしまい、相談後に何も形が残らないからです。このフローがあれば話をしながら書き込み、修正していく事が出来ます。相手も自分の話が正しく理解出来ているか確認する事が出来ますし、何よりも自分の業務の前工程/後工程が見えるのは新鮮なはずです。

 それぞれの業務処理の流れを一番知っているのは情シスです。一方で全体を通した流れは把握出来ていない事も多いです。だからこそ最初に相談し、意見を聞き、フローを起こしていくのです。情シスの業務単位の情報を、全体の流れに取り込み見える化していくのです。この時点で、情シスのメンバーはきっとあなたの味方になってくれるでしょう。

 次回はデジタルシフトの“現場”となる「店舗運営部・EC部との協業」についてお伝えします。

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逸見 光次郎(Kojiro Henmi)
三省堂書店、イーエスブックス(現セブンネットショッピング)、Amazon、イオン、カメラのキタムラ等で店舗とネット(デジタル)の現場を経験、その融合を推進。 現在はオムニチャネルコンサルタントとして独立。現場から経営まで、継続的な顧客満足と企業利益を重視した全体最適視点の可視化により、デジタル化に悩む小売流通企業の支援している。
著書:『デジタル時代の基礎知識『マーケティング』 「顧客ファースト」の時代を生き抜く新しいルール』(翔泳社)

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店舗とネット(EC)の融合という業務に関わってきた経験を生かし、コンサルタントとして小売・流通を見ている逸見光次郎氏が、店舗とネットの両方の視点からわかった、リテールビジネスのデジタルシフトに必要な事を、より現場業務に即した形でお伝えしていきます。

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