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第6回 DX DRIVE

DXについて一番、相談されること

 私が、前職のファミリーマートでDXを推進する中、社外のデジタル担当の方から最も多く受けた相談が、
「DX推進組織は、会社のどこの部門にあって、どんな役割を担っているのですか?」
と言う質問です。
 詳しくお聞きすると、どこの企業もデジタル、DXの推進組織を設立したが、社内の様々な組織が動いてくれず、生々しく言えば抵抗にあって、遅々としてDXが進んで行かないと言うのです。
 残念ながら、企業変革の経験の少ない企業人(経営陣を含め)が、とても陥りやすいのが、安直な変革組織の立ち上げ方です。
 私の場合、三菱商事時代には商社パーソンとしてローソンに飛び込み、BCGでは戦略コンサルタントとして様々な企業の変革を支援し、そしてファミリーマートに全社改革のヘッドとして招聘され、デジタル以上に改革・変革の修羅場をくぐって来ました。DXを推進して行く際も、これまでの企業変革の知見を総動員して、DX推進のための陣形をしっかりと作り上げました。

 今回は、私の企業変革の経験から、デジタル変革をDRIVEして行くためのポイントをお伝えします。

図表:当連載の全体構成 ※〇数字は連載回

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サイロ化の呪縛

 企業組織は、目先の効率化を進め続けると、各業務を細かく区分して、その中だけで最短効率を求める方向に邁進して行きます。
 結果、自部署だけで閉じて業務を廻して、他部署と情報共有や連携を積極的に行うことをしなくなる、サイロ化が進んで行きます。元々縦割りが強い日本企業組織で、縦割り組織の中で、さらに縦割りが起き、時に横割りまで起きて、強烈なサイロ化が進みます。だから、業務、システム、さらにはデータまでもがサイロ化して、新しいビジネス、サービスに大胆に方向転換させることができなくなるのです。
 縦割り化、サイロ化、タコつぼ化が起きている会社組織では、DXを推進しようとしても、一筋縄には行きません。DXの推進に対して、各部署が自部門の利益を優先させて抵抗を示したり、積極的な連携が不可欠な局面で非協力的だったり、DX推進組織は非常に苦労させられるのです。
 本当に多くのDX推進組織の方々が、DXに着手する前の段階で、サイロ化の呪縛にかかった自社組織に直面して、フリーズ状態になっている姿を、いくつも目にしてきました。

図表:DX推進組織 サイロ化の呪縛

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DX DRIVEのDON’TsとDOs

 このサイロ化の呪縛から、いかにDX推進チームを解き放ち、DX DRIVEを加速させる陣形を組み立てるのか、今回も、やってはならないこと(DON’Ts)と、やるべきこと(DOs)を、示して行きます。

図表:DX DRIVE DON’Ts & DOs

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DX DRIVE DON’Tsべからず集

[DON’Ts1] 陸の孤島にDX推進組織を置く
 DXについて最も多く受ける相談が、DX推進組織の置き方、役割だと冒頭に書きました。この相談を受けると、逆に「皆さんの会社では、どうなのですか?」と聞き返します。
 すると、経営層(もっと言えばCEO、社長)への直接的なレポートラインもなく、権限もほとんどない、陸の孤島のような組織になってしまっているのです。
 この連載でも書き続けて来ましたが、本物のDXには2つの道しかなく、その1つは「コア事業の破壊と創造」です(もう1つは、DX特区の出島による未来の創業)。コア事業破壊の先兵であるDX推進組織が、経営と一蓮托生の意思決定ルートから離れた場所に浮かぶ、陸の孤島状態になっている時点で、DX不戦敗が確定しているのです。

[DON’Ts 2] 経営がサイロ化を放置する
 サイロ化の呪縛こそが、DXを含む企業変革を機能不全にしてしまうわけですが、このサイロ化に手入れをできるとすれば、それは各サイロを上空から叩き壊せる、社長や経営層だけです。
 経営トップこそが、強いリーダーシップを発揮して、サイロ化を絶対に許さず、DXを強固に進める姿勢を打ち出さなければなりません。しかし、現実では、その経営トップが、サイロの呪縛を見て見ぬ振りをして、「当事者同士で、よく話し合ってくれ」しか言わない企業もあるようです。
 もはや、よく話し合えない状況だからサイロ化なのに、サイロ化を放置する経営トップは、無責任の極みです。

DX DRIVE DOsべき集

[DOs1] 経営直轄の場所に、組織横断のDX推進組織を置く
 多くの人を悩ます、DX推進組織をどこに置くべきか?
 答えは、DX推進組織が、直接、取締役会や経営会議など、企業の意思決定機関の直轄にあることです。またサイロ化を飛び越えるために、組織横断で推進していけることも必須です。
 「経営企画部門、マーケティング部門、事業開発部門、情報システム部門、どこにDX組織を置くべきか?」
 この問いを悩んでいる方が多くいますが、そんなことよりも最重要なのは、これら必要な部門を横断していて、推進する中で経営レベルの重要な判断に直面した場合、速やかに経営陣にエスカレーション(上申)できる体制を作ることなのです。

[DOs2] DX推進組織には、強い権限を与える
 横断的かつ、経営直轄の組織を作ったとしても、現実的に日々のDX推進の中では、サイロ化の呪縛にかかった既存組織と衝突します。DX推進を優先して、既存組織を突き動かせる強い権限がDX組織側には必要です。権限を持たないDX組織では、既存組織に跳ね返されてしまいます。
 DX組織が権限を持たないと、DX組織は無用な社内調整、根回しに走らなくてはならず、時に既存組織との社内政治が始まってしまい、DXがあるべき方向ではなくて、歪んだ方向に迷走してしまいます。
 尚、既存事業部門よりも、X組織の方に優越的権限を与えてしまうことによる、組織の軋轢を避ける方法が、会社の外にDX特区の出島を作ることです。DX特区の出島を、ガバナンスの名のもとに縛りつけては、意味がありません。出島には自治権をしっかり与えることが重要です。

[DOs3] DX推進組織は高いレベルの“PMO力”を磨き上げる
 デジタル人材の不足が、よく叫ばれています。しかし、デジタル人材以前に、そもそも変革人材、より具体的に言えば、デジタル人材とタッグを組んで企業変革のプロジェクト、プログラムを主導できる人材の欠如こそ、日本企業の深刻な課題です。
 既存事業の中で予実管理や業務的なPDCAばかり注力したため、乱世の企業変革パワーを、日本企業は失ってしまっているのです。
 次回の記事で詳しく述べますが、私はファミリーマートでDXを推進する上で、デジタル人材は外部アドバイザーを起用して時間を買いながら、最も力を入れたのが、DXのプロジェクト/プログラム・マネジメント・オフィス(PMO)の機能構築です。
 DX組織のチームメンバーには、戦略コンサルティングで使われるツールを駆使したPMO手法をOJT指導しました。関連部署を巻き込んで、横断的かつ強固に変革を進める手腕を磨き上げてもらったのです。実戦訓練の成果か、多くのDXチームメンバーが、戦略コンサルタントに負けない、PMOプロフェッショナルに育ってくれました。

図表:PMOツール―信号機付き業務管理表

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 本連載はPMOの手法を解説するものではないので、具体的な方法論は割愛しますが、例えば、このツールでは、業務ごとの期限と担当者を明示します。その上で、期限に対して巡航速度か、遅れがあるかを信号機で見える化し、部署の異なる関連部署の人員一人一人に、しっかり責任を背負ってもらいます(裏では、DXチームメンバーに、「赤信号にするな、早めにレスキューに入って、必ず黄色信号でリカバリーせよ」と指示していました)。
 同時に、課題やリスクを早めに各事業部門の責任者と共通認識化することで、部門を越えた助け合いの精神を生み出し、One Teamとして変革を推進できる、シンプルだけどパワフルなツールです。

 今回の記事は、まったく“デジタル”は出てこない内容でしたが、DXとはデジタルによる企業変革です。世の中のDXの解説では、ほとんどがデジタルの側面からしか語られていないことは、DX実践をしてきた者として、ずっと違和感がありました。
 いかに企業変革をDRIVEさせるか、今回の企業変革に共通するエッセンスが、皆さまの多くが悩まれるDX推進のヒントになれば幸いです。

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第2回 DX幻想を叩き斬る 中編
第3回 DX幻想を叩き斬る 後編
第4回 DXの旅
第5回 DX ROADMAP
第7回 DX 組織

植野 大輔(Daisuke Ueno)
早稲田大学政治経済学部卒、商学研究科博士後期課程 単位満了退学。三菱商事(情報産業グループ)に入社、在籍中にローソンに約4年間出向。ボストンコンサルティンググループ(BCG)を経て、2017年1月ファミリーマートに入社、改革推進室長、マーケティング本部長を歴任の後、デジタル戦略部長に就任。デジタル統括責任者として全社デジタル戦略の策定、ファミペイの垂直立上げ等のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導。2020年3月、DX JAPANを設立。

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DX JAPAN代表の植野大輔氏が、三菱商事、大手コンビニ、外資系大手コンサルを経て、ファミリーマートに入社、デジタル統括責任者として全社デジタル戦略の策定、ファミペイの垂直立上げ等のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導した経験から、DXの実状とあるべきDX実践についてお伝えします。

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