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第5回 デジタルシフトの成功を左右するITマネージメント

デジタルシフト、業務改革の次はIT導入

 前回「デジタルシフトの成果=業務改革×IT導入」というお話(第4回デジタルシフトは業務改革からはじめる)をさせていただき、「業務改革」の進め方についてご説明させていただきました。今回は、もう一つの「IT導入」についてですが、ITを導入を成功させるためには、自社のシステムの状況を把握し、自社でITマネージメント力を高めていくための方法につきご説明させていただきます。

自社のシステムの状況がわからない

 まず、IT導入をする際に最も大切なのは自社システムの状況を把握しておくことです。しかし、多くの経営者の方々から「システムにコストがかかりすぎる」「新しいシステムにしたいが現状がよくわからない」という声をお聞きします。歴史が長い会社ほどその悩みは大きいようです。システムが企業に導入されるようになったのは1970年代、そして1980年代には多くの企業がシステムの導入を始めました。当時は、定型化された会計システムなど管理部門を中心に導入が進みました。1990年代中盤からはクライアント・サーバーの時代に入り基幹システムと個人PCとの間でデータ連携ができるようになりました。当時は企業ごとに独自の基幹システムの構築が常識であり、多くの企業では現在もそれらの基幹システムが残っているため、様々な問題を引き起こしています。

世界に遅れてしまった日本のシステム

 世界を見てみると日本はとても特殊な状況です。1990年代後半になるとERP(Enterprise Resources Planning)ソフトが登場しました。現在では「基幹情報システム」を意味しますが、当時、部門ごとに点在したデータを一箇所に集めていくことを目的としたシステムです。システムは会計・営業・購買・物流などコンポーネントに分かれ標準化されています。欧米では、将来的な機能追加等を加味して、「業務をERPソフトに合わせていく」改革を実行し、システム適用を適用する取組みが進みました。しかし、日本では、このERPソフトはあまり導入が進みませんでした。また、導入しても業務を変えずにERPソフトを自社の業務にあわせるために大幅なカスタマイズをしてしまいました。原因は様々ですが、一つは、現場主導の日本組織においては、業務を変えることへの抵抗感が強かったこと、もう一つは、システム会社が自らの収益があがるカスタマイズを提案したことです。結果、日本ではカスタマイズされ機能が固定化された古いシステムが多く残ってしまいガラパスコ化してしまっています。

図4-1

クラウド時代に顕在化した問題

 2000年代に入るとビジネスにインターネットが活用されるようになってきました。当初は、ホームページやECなど今までの基幹システムとは独立して構築が進み大きな問題にはなっていませんでした。しかし2010年代に入り「システムは所有から利用」の時代となり、クラウド化を検討する企業が増えてきました。クラウドシステムは汎用的標準化されたインターネットを介してシステムを皆で活用していくというシステムです。クラウド化することで、システムコストが下がり、様々な新しい機能が自然にバージョンアップされていきます。システム改修もコストをかけることなく対応できるようになりますので、急ピッチでクラウド化する企業が増えています。また、最近では、「2025年問題」として、2025年には技術の進歩に伴い古い技術のサポートができなくなり、わかるエンジニアもいなくなり、多くの日本企業のシステムは機能不全に陥る危険があるといわれており、その課題に対処するためにも、日本企業はクラウド化を急がなくてはいけなくなっています。

クラウドを正として、業務を適用させる

 日本では、多くの企業が「今の業務をどうシステム化」するかとういう発想でシステムを導入してきました。しかし、これからは「クラウドシステムに自社の業務をどう適用させるか」という逆転の発想を持つ必要があります。多くのクラウドサービスは、できうる限り、標準化を考え、顧客差別化になる部分のみを独自開発していくと割り切って考えることが大切です。まず業務改革、次にシステム改革を実施する必要がるのです。この順番で改革をすることで、開発スピードがあがり、コストも下がり、そして何よりも効果が飛躍的にあがります。

自社でITをマネージメントする

 IT改革を成功させるには、改革を他人任せにしないで、自社でマネージメントしていくことです。では、ITマネージメントとは、現状のシステムの状況を把握し、将来の進むべきゴールを設定し、そのギャップを把握、そして実行プランに落とし込み、具体的にプロジェクトを立ち上げ、社内部門・社内エンジニア・SIベンダー・プロダクトベンダーなどとチームをつくり実現していくことです。その業務は非常に多岐にわたり、多くの知識と経験が要求されます。これらを外部に委託することも可能ですが、昨今ではトラブルのもとになっているのが現状です。業務を深く知らないシステム会社が業務整理をすると現状の改善レベルになってしまいますし、複数のシステム会社が動くプロジェクトですと、お互いにお見合いをしてしまいうまくいかないケースが多発しています。やはり、自社のIT化は自社の人間が中心になって進めることが一番良いのです。そして、それらをまとめて推進するリーダーはとても大切です。そのリーダーはIT全般の知識を持ち、改革の手法を知り、多くの人を同じ方向にむけるコミュニケーション力を持つまさにIT改革のプロデューサー、「ITプロデューサー」と呼べる人材が必要となります。

図5-2

国内に少ないITプロデューサー

 しかし、「ITプロデューサー」と呼べる人材はあまり多くありません。理想を言えば、システムの構築経験があり、業務改革経験があり、自社内に閉じないで多くの人を動かした経験のある人が望ましいのですが、欧米のように転職を重ねながらそういった経験を積み重ねた人材は日本にはあまり多くはありません。最近では日本でもデジタルシフトを目指す企業も増え、人材確保のため外部採用に力をいれるようになりました。多くの人材紹介会社を使い、待遇を良くして大量採用をする企業もあります。しかし、そういった企業の話をお聞かせいただくと、必ずしもうまくいっているわけではないようです。むしろ採用した人材の扱いに困っているケースも多いようです。なぜなのでしょうか?多くの場合、システム会社出身のエンジニア、コンサル会社出身のコンサルタントを採用します。しかし、彼らは確かに、ITの知識はあるかもしれませんが、今までの仕事はクライアントのやりたいことを万全なサポート体制のもと実現してきたのであって、企業の中に入りサポート体制のない中、自ら主体的に行動していくことができないことが多いように感じます。

ITプロデューサを自社で育てる

 デジタルシフトを進めるならば、ITプロデューサーは必須です。しかし、日本にはそういったIT人材は少ない中、どうしたら良いのでしょうか?答えは、「自社でITプロデューサーを育てる」です。一から育てた方が近道だと思います。ITに興味があり、新しいことに挑戦することが好きで、人が好きな人は、ITプロデユーサーの素養があります。社内の人材を見てくださいそういった人材は必ず数人はいるものです。その人材を外部の力を借りながらでも教育し、実際に経験させていくことによりITプロデューサーは育ちます。このようなITプロデューサーを育てることこそが、IT改革を成功に導き、これから訪れるデジタル化社会において、企業の大きな差別化戦略につながるでしょう。

図5-3

最終回につづく

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第5回 デジタルシフトの成功を左右するITマネージメント
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鈴木 康弘(Yasuhiro Suzuki)
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。
著書: 「アマゾンエフェクト! ―「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか」 (プレジデント社) 

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