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第5回 DX ROADMAP

DXの旅

 前回は、自社の既存コア事業を直接、破壊と創造に取り掛かるか、または自社組織の外に“出島”を作り、未来の新しい本社を創業しに行く気概でやるか、DXはこの2つしかないことを示しました。
 「コア事業の破壊と創造」「出島での未来の本社創業」―この2つこそが本物のDXであり、当然、一朝一夕で実現するものではありません。5年いや10年以上の長旅です。

図表:デジタルの“踏み絵”全体像

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図表:当連載の全体構成 ※〇数字は連載回

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DXの旅 三種の神器

 冒険の旅に出るには、何が必要でしょうか?
 ズバリ、地図船(乗り物)仲間の3つです。
 DXの旅も同じです。具体的に言えば、ロードマップ推進ビークル組織・人材の3つ、これらこそがDXの旅で決して欠かせない、三種の神器です。

図表:DXの旅 三種の神器

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 今回は地図にあたる、DX ROADMAP(ロードマップ)について勘所をお伝えして行きます。

DX ROADMAPとは

 ロードマップ自体は、とてもシンプルで、誰が見ても明らかで、けっして難しいものではありません。だからこそ、DXについて、経営陣や会社全体が同じ方向を向いて、取るべきリスクを一同で腹くくりして、同じ時間軸で進んで行くために、真っ先にこのロードマップ作りこそ取り掛かるべきなのです。

図表:ロードマップの参考イメージ例

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 具体的には、どの領域、どの分野で、いつ何をするのか?、さらに必要に応じ、想定される投資額や、会社としての優先順位など戦略的な情報を併記するのも、有効です。
 もちろん、このロードマップは絵に描いた餅で終わらぬよう、しっかりと取締役会、経営会議でDXにかかる投資額とセットで機関決定をしておくべきです。
 しかし、いざ、本物のロードマップを作るとなると、実はすさまじい知的体力が要求され、一筋縄ではいきません。

DX ROADMAPのDON’TsとDOs

 経営からDX検討が情報システム部門か経営企画部門に落ち、時にそこにデジタル人材育成と言う余計な人事部門の思惑が混ざって、やる気はあるけどデジタルは素人な若手社員が加わって、未来ビジョンや中期経営計画にDXのフレーバーを何とかまぶそうと1~2年ぐらいかけて、こねくり回し続けている、こんな痛々しいケースを残念ながら目撃します。
 ここでは、DXのロードマップを正しく作り上げて行く上で、やってはならないこと(DON’Ts)と、やるべきこと(DOs)を、それぞれ3つずつ示して行きます。
 ちなみに、再現性を持って、「これをやったらうまくいく」と言うものは、世の中、なかなかないもので、一方、「これをやったら、かなりの確率で失敗する」と言うものは、けっこうあるように思っています。ですので、まずはDON’Tsを絶対にやらないことが、勝率をあげる初めの一歩です。(だから、普通はDOs と DON’Tsの順番ですが、DON’Tsを先に持ってきています)

図表:DX ROADMAP DON’Ts & DOs

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DXロードマップ策定 DON’Tsべからず集

[DON’Ts 1] ビジョンと中計(中期経営計画)をこねくり回す

 DXの相談を受ける中でよく聞くのが、
「来期の中期経営計画にDXの視点も盛り込むよう、言われました」
と言うものです。
「次の中期経営計画ではなく、今すぐDXを始めなくて、大丈夫なのですか?」
と聞くと、
「そうかもしれませんが、あくまで役員からは来期の中期経営計画でとの指示です」
とのことで、なかなか悩ましいものです、、、。
 もう一つやっかいなのが、DXの未来をビジョン構想するというものです。質が悪いことに、2年ぐらい前から未来ビジョン構想を着手していて、そこに最近、急にDXがHOTトピックになったため、今から未来ビジョンにDXを混ぜ込むと言う、歪なお絵かきが始まりがちです。
 DXに必要なのは、“ビジョンの絵”でも“分厚い計画資料”でもなく、DXの旅に出るための“1枚の地図”です。

[DON’Ts 2] 3ヶ月以上かけて作る

 来期の中期経営計画を1~2年かけて準備するとか、ビジョン構想を(コロナ影響もあって)2021年夏に発表するとか、足の長い社内プロセスに引っ張られて、DXのロードマップまで停滞している光景をよく見ます。
 第1回目でPDCA幻想として、主に予実管理としてのPDCAの罪を書きました。もう一つPDCA幻想のやっかいな点は、多くの日本企業は、そもそも最初のP(Plan)に時間をかけすぎなのです。オーバープランニングなのです。
 戦略コンサルティングファームがクライアントの経営戦略を策定する場合、昔は3ヶ月ぐらいのプロジェクトが一般的でしたが、最近は2カ月が当たり前、場合によっては1.5カ月のようなプロジェクト期間になっています。
 これだけ外部環境の変化が激しい時代に、3ヶ月もかけていたら、環境はとっくに変化してしまいます。また、不確実性が高く先が見通せない時代、戦略が多少粗くても、さっさと具体推進して行くことで見えてくる知恵にこそ、価値があるのです。
 ましてや、より急速かつ複雑なデジタルの世界です。DXをスタートさせるためのロードマップの策定に3ヶ月以上をかけるなんて、古地図づくりをやっているようなものです。

[DON’Ts 3]社内の素人だけで片手間でやる

 ビジネスの本質は不変だとしても、デジタルには特有の法則やビジネスモデルがあります(例えば、ネットワーク外部性、プラットフォーム、アジャイル開発)。これらデジタルビジネスへの理解の浅い(DX幻想にはまりがちな)スタッフが、まして別の仕事を持ちながら兼務で取り組んでも、実効性あるDXロードマップの策定は不可能です。

DXロードマップ策定 DOsべき集

DOs 1DX戦略投資額とセットで決める

 DXロードマップを策定する前に、会社としてDXに総額でどれぐらいの投資をするのか、DX投資枠を機関決定する必要があります。多くの会社で見られる、ボトムアップで各部署から申請させて取りまとめるやり方は、副次的なチェックにはなれど、既存事業の中で出されたDXごっこの必要予算になりがちです。まず会社として、DXに財務体力のどれだけを割くのか、大胆に決めきることからDXの地図づくりは始まります。

DOs 22週間で叩きとなるフレームワークを出す

 DON’Tsでロードマップ作りを3ヶ月以上かけて作るなと書きましたが、ならばどれぐらいのスピード感かと言うと、最初の目安が2週間です。2週間で、粗くても良いので、DXロードマップの輪郭が見えている、これぐらいのスピード感でないと、デジタルのダイナミズムに追随して行くことはできません。
 注意したいのは、この段階で個別の中身まで完成しているわけではありません。2週間で、まずDX戦略投資枠の規模感、そしてDXロードマップの縦の構造の輪郭が見えていること大事なのです。
 DXロードマップの横軸はとても単純で、時間軸です。一方、ロードマップの縦軸をどう設計するか?市場分野か、自社の事業領域か、機能か、DX特有のアジェンダを盛り込むか?、これはその会社の状況に応じ、テーラーメイドで設計する必要があります。

図表:DXロードマップ策定にかかる論点

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 はっきり言って、個別のDXプログラムの中身など、推進して行く中で、いくらでも変わって行きます。その都度、UPDATEして書き換えて行けば良いのです。しかしながら、DX投資額が非現実的な規模感であったり、ロードマップの構造が根本的に異なると、旅の振り出しにもどらなくてはなりません。

DOs 3顧客起点、社会課題を出発点にする(必要ならそのプロを呼ぶ)

 2週間で粗くても発射台となりうるDXロードマップのフレームを作り上げ、個別の中身を具体検討し、3ヶ月以内にはDXロードマップを完成させ、DXに着手するスピード感が必須です。
 この時、DXを捉えるためとても重要な視点が、自社のコア事業資産と、デジタル技術を徹底活用して、①顧客起点でペインポイントを解消させる、②SDGsのような社会課題を解決すると言う2つです。
 この2つの視点をおさえてロードマップ策定を進めるチームには、顧客ニーズや不満の精緻な把握、社会課題にかかるシナリオプランニング、その上でデジタル技術や、さらにデジタルによるビジネスモデルに精通しているメンバーがいなくては、とてもやり切ることはできません。
 おそらく、普通の大手企業で、社内にこのようなメンバー全員を抱えている企業は、なかなかないでしょう。足りないピースを埋めるには、それぞれ外部からプロフェッショナルに検討に参画してもらうべきです。ただし、やっかいなことに、1社でこれら全てを提供できる専門会社、ファームもないのです。分野ごとにベストの専門人材を、発掘、起用することが、とても大切です。

 中期経営計画でも未来ビジョンでもなく、DXの旅に出るため、まず手元に本物のDX ROADMAPの地図が必要なこと、ご理解頂けたなら幸いです。

★関連記事
第1回 DX幻想を叩き斬る 前編
第2回 DX幻想を叩き斬る 中編
第3回 DX幻想を叩き斬る 後編
第4回 DXの旅
第6回 DX DRIVE
第7回 DX 組織

植野 大輔(Daisuke Ueno)
早稲田大学政治経済学部卒、商学研究科博士後期課程 単位満了退学。三菱商事(情報産業グループ)に入社、在籍中にローソンに約4年間出向。ボストンコンサルティンググループ(BCG)を経て、2017年1月ファミリーマートに入社、改革推進室長、マーケティング本部長を歴任の後、デジタル戦略部長に就任。デジタル統括責任者として全社デジタル戦略の策定、ファミペイの垂直立上げ等のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導。2020年3月、DX JAPANを設立。

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DX JAPAN代表の植野大輔氏が、三菱商事、大手コンビニ、外資系大手コンサルを経て、ファミリーマートに入社、デジタル統括責任者として全社デジタル戦略の策定、ファミペイの垂直立上げ等のデジタルトランスフォーメーション(DX)を主導した経験から、DXの実状とあるべきDX実践についてお伝えします。

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