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第5回 心理ロイヤルティの定量化と分析

 第3~4回では、ロイヤルティは3階層で構造化できることを解説し、デジタルシフト時代のマーケターの重要なワークであることを説明しました。最終回の第5回では、構造化されたロイヤルティの定量化とその分析事例に関して解説します。

ロイヤルティを定量化する5つの指標

 第2回で、ロイヤルティには、「経済ロイヤルティ」「行動ロイヤルティ」「心理ロイヤルティ」の3種類が存在し、ロイヤルティマネジメントは、心理ロイヤルティをマネジメントすることが重要であると解説しました。
 定量化の側面では、経済ロイヤルティと行動ロイヤルティは比較的容易に定量化できます。お客様との取引データ、お客様の来店履歴、ホームページのアクセス履歴の取得は最近のデジタル技術により容易になっています。IoTやスマホ、SNSの普及でお客様と企業は常時接続された状態となり、これらの定量化の推進に拍車がかかりました。
 それでは、心理ロイヤルティの定量化はどうすればよいのでしょうか。心理ロイヤルティはお客様の気持ちを定量化しなければなりません。商品を購入した結果どう感じたか、どれくらい当社や商品に愛着を持ったか、ホームページに数多くアクセスした理由やアクセスしてどう感じたかを把握するためには、お客様に確認するしかありません。つまり、アンケートによりお客様の気持ちを把握し、定量化していくことになります。
 筆者は構造化されたロイヤルティをアンケート結果からどう定量化するべきかを模索してきました。そして5つの指標で定量化できることが分かりました。
 以下に、第4回でまとめた図のロイヤルティの構造に合わせて、定量化の指標を整理しました。
 今回は、指標に至った背景や経緯は省略して、結論のみこの図をみながら説明します。

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 まず、定量化の最上位の指標がロイヤルティスコアです。企業や商品やサービスのロイヤルティの指標です。指標は継続利用の意向あるいは推奨の意向で定量化し、顧客全体や顧客セグメントごとに集計します。
 この指標で最も有名な指標が推奨の意向で測ったNPS®(Net Promoter Score)です。(NPS®はBain&Company、Fred Reichheld、Satmetrix Systemsの登録商標です)
 ロイヤルティスコアを形作るのが複数のロイヤルティドライバーの満足です。その満足は頭の満足と心の満足に分解されます。指標は頭の満足を測るドライバーの満足度と、心の満足を測るドライバーの琴線感度があります。ドライバー満足度は5段階での満足を聞くアンケートでTop2Box、すなわち大変満足と満足が占める比率で算出します。ドライバーの琴線感度はアンケートでTop2Boxを付けた集団のロイヤルティスコアを算出します。
 ロイヤルティドライバーの満足に影響をあたえるのが複数のポジティブ体験とネガティブ体験です。そして各々の体験は頭の満足または心の満足への影響度合が違います。頭の満足への影響度合を示した指標が体験頻度であり、心の満足への影響を示した指標が体験琴線感度です。体験頻度は該当の顧客体験のチェック率を算出したものです。体験琴線感度は、該当の顧客体験をしたお客様の集団のロイヤルティスコアを算出したものです。
 これで、ロイヤルティ、ロイヤルティドライバーの満足度、顧客体験と3階層に構造化されたロイヤルティをアンケートから収集される指標で定量化し見える化することが可能になります。
 この5つの指標を使うことで様々な分析と考察が可能になります。マーケターは、ロイヤルティ調査を実施し、結果から提言・考察する能力が必要になってきます。

 以下、具体例を説明します。

考察や提言の事例1
社長は「お客様第一主義!!」と言っていますが、実態は「売上至上主義」じゃないですか!戦略を見直してください!!

 お客様の過去1年間の購買金額をだし、ロイヤルティスコアと紐づけます。そして、ロイヤルティの高中低の順番にお客様の売上を「良い売上」、「不確実な売上」、「悪い売上」と称してその比率を調べます。
 売上至上主義の企業は、必ずや「悪い売上」の比率が年々高まっており、この売り上げは来年無くなってしまうリスクが高い売上になります。売上が年々増加しているからといって安心できる経営ではありません。お客様志向でないことがこの「悪い売上」を増やしている要因と説明できます。

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考察や提言の事例2
「わが社はカスタマーサクセスを実現するクラウドサービスを提供します!!」と言っていますが、言っていることと実態が逆です!
新たな具体的な施策を立案しましょう!

 クラウドベンダーの基本価値と体験価値ドライバーの満足度と琴線感度をマッピング分析し各ドライバーのポジションによる評価をしました。すると、このベンダーは価格でお客様を引きつけ、運用開始までは手厚いサポートで支援するが、運用開始後は支援ができていない。ましてや、カスタマーサクセスの支援はできていないことがわかりました。

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考察や提言の事例3
接客時の感動体験は、「買い物とは関係ない人(お子様や同伴者)への気配り」が良いと感じたことです。
目先の販売だけに気をとられることなく、気配りを日ごろから気をつけましょう。

 アパレルショップにおける「店舗内での接客」ドライバーのポジティブ体験の体験琴線感度を出したところ、琴線感度が最も高い体験は、「買い物とは関係ない人(お子様や同伴者)への気配り」が良いと感じたことでした。
 この体験は体験した人は少ないものの、心の満足とロイヤルティに大きく影響を及ぼしている体験であることが分かりました。

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デジタルシフト時代のマーケターの重要課題(まとめ)

5回の連載のまとめをします。

①マーケティングの真のデジタルシフトとは?
 マーケティングのデジタルシフトとは、デジタル技術を使った狩猟型マーケティングの実践ではなく、社会・顧客のデジタルシフトに対応し、農耕型マーケティングに変革することである。

②ロイヤルティマネジメントの重要性
 デジタルシフト時代のマーケターの仕事は、目的を「購買者づくり」から「ファンづくり」に変更し、顧客体験を起点とするロイヤルティマネジメントタイプへの変革が求められている。

③ロイヤルティの構造化
 ロイヤルティは、「ロイヤルティ」「ロイヤルティドライバーの満足」「顧客体験」の3階層で構造化できる。

④ロイヤルティの定量化
 構造化されたロイヤルティは、「ロイヤルティスコア」「ドライバー満足度」「ドライバー琴線感度」「体験頻度」「体験琴線感度」の5つの指標で定量化できる。

⑤ロイヤルティの分析
 構造化&定量化されたロイヤルティを様々な視点で分析・考察することで、ロイヤルティ向上施策、すなわちデジタルシフト時代のマーケティング施策が立案可能となる。

以上、5回にわたって連載しました。
読者の皆様のご意見をいただければ幸いです。また、デジタルシフト塾で議論させていただければと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

★関連記事
第1回 マーケティングの真のデジタルシフトとは?
第2回 ロイヤルティマネジメントの重要性
第3回 心理ロイヤルティの構造化 その1
第4回 心理ロイヤルティの構造化 その2

渡部 弘毅 (わたなべ ひろき)
ISラボ 代表

1985年日本ユニシス入社、2000年日本IBM、2005年日本テレネットを経て、2012年にISラボ設立。一貫してCRM分野に関わり、プロダクトマーケティング、業務改革コンサルタント、事業企画を経験。現在はロイヤルティマネジメントのコンサルティング活動中。日本オムニチャネル協会、情報処理学会、コールセンタージャパン等、複数の研究会のリーダーを務め、定期的に数多くのセミナーの講師を担当している。
著書:『お客様の心をつかむ心理ロイヤルティマーケティング 「心の満足」と「頭の満足」を測り、科学的にロイヤルティを高める手法

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CRM分野でキャリアを重ね、プロダクトマーケティング、業務改革コンサルタント、事業企画を経験し、現在はロイヤルティマネジメントのコンサルタントとして活躍中の渡部弘毅氏が、デジタルシフト時代においてマーケターが取り組むべきことに関して解説していきます。

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