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第5回 後ろを振り返るな、前を向いて挑戦しろ

 今、私たちは大きな変化の時代を生き、新しい生活への転換を求められています。企業のデジタル化は急速に進み、コロナの影響により、これから生き残る人、取り残される人が明確になってきました。これからは、管理者よりも実践者が、同質化した人材より異質な人材が、会社の看板に頼らず個人で勝負できる人材が必要とされるようになるでしょう。

「これから生き残る人、取り残される人」 前回までのお話
    第1回 コロナが時代を加速させる
    第2回 実践者の時代、管理者は去れ
    第3回 異質を恐れるな、同質化を恐れろ
    第4回 会社の看板を捨て、個人で勝負しろ

最終回の今回は、「後ろを振り返るな、前を向いて勝負しろ」と題して、最後に、これから生き抜くための心持ちについてお話をしていきます。

「いつになったら元に戻るだろう?」という人

 最近、良く聞かれる質問は、「コロナの影響を受けて大変なんです。いつになったら元に戻るでしょうか?」というものです。そう問われたときには、「コロナはやがてワクチンが開発され現在の脅威が無くなる日が来るとは思います。しかし、コロナ前と全く同じ状態には戻らないと思います。」と答えます。
 今から30年ほど前、バブルがはじけたときにも「いつになったら元に戻るだろう?」と言っていた人は沢山いました。さらに遡ると、太平洋戦争終結後の軍人、明治維新後の武士、関ヶ原後の戦国武将も、想像ですが同様に「いつになったら元に戻るだろう」と言っていたことかと思います。もっと身近な例ですと、定年後のサラリーマン、全盛を過ぎたスポーツ選手も、ちょっと言葉は違いますが「あの頃はよかった。あの頃は、、、」なんて昔話を延々と続けてしまう人に会ったことがあるかと思います。
 しかし、これらの例で、元に戻ったことはあるでしょうか。答えはNOです。バブルがはじけた後、失われた20年、30年という時間が過ぎました。太平洋戦争後は民主主義の今の時代となり、明治維新後は二度と武士の時代は訪れず、関ヶ原後は戦国時代には戻りませんでした。同様に、定年後のサラリーマンも、全盛を過ぎたスポーツ選手も、古き良き時代に戻ることはありませんでした。
 同じように、今、コロナ禍にあり「いつになったら元に戻るだろう?」と言っていても、決して元には戻らないと考えた方が良いと思います。ですから、「いつになったら元に戻るだろう?」という人をみると、私は、明確に「全く同じ状態には戻らない」とお伝えするようにしています。

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過去の成功体験を捨てると、本物が見えてくる

 なぜ、人は元に戻りたがるのでしょうか。それは、そのときが良かった、幸せだったと思うからであり、過去の成功体験から抜け出せずにいる状態だからです。しかし、時計の針は逆に戻すことはできませんし、ましてや全ての人間の記憶を消すこともできないのですから、「いつになったら元に戻るだろう?」と思っている人は、自分が過去の成功体験から抜け出せずにいる状態であることを認識し、その成功体験を捨てることが大切です。成功体験を捨て、今に集中していくと、「本物」が見えてきます。
 私も非常事態宣言下においては、外出を自粛し、在宅リモートワークを続けていました。最初は、不自由に感じましたし、早く元に戻らないかなと思っていました。
 その生活下で、妻は毎日料理を工夫して作ってくれました。最初はスーパーで買った食材で料理をしていましたが、あるときから産直の野菜を頼むようになりました。味は格段に上がり、スーパーで新鮮だと思っていた野菜も実は新鮮でなかったことに気づかされました。もしかしたら、綺麗な売場、感じの良い接客に騙されていたのかもしれません。
 また、非常事態宣言後、家族で外食に行ったときに、運ばれてきた食事を口に運んだ瞬間「美味しい!」と全員が声を出し、笑顔になりました。やはり、プロの料理人が作る料理は美味しいと再認識した瞬間でした。
 仕事でも、必要最低限ですが、外に出ることも増えてきました。実際に人に会い話をすると、仕事がスムーズに運び、その時間が貴重であり、楽しい時間だとも感じました。同時に、以前の惰性で人に会ったり、付き合いで会食をしていたことは、意味のない、楽しくない時間を過ごしていたんだと気づかされました。
 このように、この数カ月、制約された生活をすることで、強制的に自分の惰性ともいえる習慣が変わり、自然に過去の成功体験を捨てることとなり、今まで気が付かなかった「本物」に気づくことが出来ました。美味しい食材、美味しい料理をつくる料理人、必要な仕事、大切な人間関係、必要な時間の使い方に気がつくことが出来たのです。

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今に集中し、未来に向かって挑戦する

 過去の成功体験を捨てることはとても難しいことです。しかし、過去の成功体験を捨て、今に集中することができたならば、本物が見えてきます。
 私は、外出自粛により、本物の食材、本物の料理人、必要な仕事、大切な人間関係、必要な時間の使い方が見えてきました。今まで、必要だと、大切だと思っていたことは、多くは妄想であり、リモートで置き換えることが可能であることに気づくことができました。皆さんも、過去の成功体験に縛られていないのであれば同様のことを感じていることと思います。
 同時に、これらの変化の中から、未来に向けての可能性をも見出すことができます。私の仕事は、クライアントを訪問し、話をすることが必須の仕事だと思っていました。今までは、どんなに多くとも、日に4件の訪問しかできませんでした。しかし、リモートワークを余儀なくされ、クライアントとはオンライン会議で仕事を進める形になりました。すると、最初は多少、戸惑いがあったものの、移動時間がカットできるため、今では1日に倍以上のクライアントをサポートすることができるようになりました。また、今までは不可能だった地方のクライアントもサポートできるようになりました。これは更に拡大していきたいと思っています。
 また、社内のコミュニケーションも、リアルで話をする機会よりも、圧倒的に頻繁に話をする機会が増えたと感じています。さらに、通勤が無くなったことで、満員電車に乗るストレスから解放され、家族とのコミュニケーションも増えました。この良き動きを止めることなく、7月からは私たちは、スーパーフレックス制度を導入し、「必ず出社しなければならない時間」という概念を取り除き、社員の自主性と計画性を重んじ、働く場所と時間を自分で決められるようにしました。
 このように、自らの体験からも感じますが、常に過去に縛られず、今に集中することで本物が見え、新しい可能性に気づき、未来に向かって挑戦し続けることが大切です。最後までお読みいただいた皆さんに、もう一度、お伝えしたい言葉は「後ろを振り返るな、前を向いて挑戦しろ!」です。

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 「これから生き残る人、取り残される人」として連載してまいりましたが、今回で最終回です。私たちは、今、大きな変化の中にいます。連載の中でお話してきた話は、常に自分自身に言い聞かせていることです。皆さんの少しでもご参考になれば、嬉しく思います。

(おわり)

【連載】「これから生き残る人、取り残される人」(予定)
 第1回 コロナが時代を加速させる
 第2回 実践者の時代、管理者は去れ
 第3回 異質を恐れるな、同質化を恐れろ
 第4回 会社の看板を捨て、個人で勝負しろ
 第5回 後ろを振り返るな、前を向いて挑戦しろ

 ★過去のこの著者の連載
 【緊急連載】完全リモートワーク経営術
 【連載】デジタルシフト成功への道
鈴木 康弘(Yasuhiro Suzuki)
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、情報経営イノベーション専門職大学客員教授、日本オムニチャネル協会会長も兼任。
著書: 「アマゾンエフェクト! ―「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか」 (プレジデント社) 

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