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第4回 デジタルシフトは業務改革から始める

デジタルシフトは「ITを活用した業務改革」

 デジタルシフトとは、これから訪れるデジタル社会の顧客の生活をイメージして、自社の業務をITを活用し変革していくことです。デジタルシフトを「ITの導入」と勘違いしている人が意外と多くいらっしゃいますが、
業務改革せずに単にITを導入しても思ったような成果は得られません。
デジタルシフトの成果は、デジタルシフトの成果=業務改革×IT導入とも表現することができます。仮に全く業務を変えない場合は業務改革は「0」であり、IT導入をいくら実施しても、デジタルシフトの成果は「0」すなわち全く成果が得られません。今回は、その業務改革をどのように実施していけば良いかについてお話していきます。

未来の顧客を想像して、業務改革をスタートする

 デジタル社会への変革は益々進み、最近では、AI、IOT、RPAなどが実活用され、間もなく5G時代に突入し通信速度が上がり、さらに大きく変わっていくでしょう。そのような近未来に社会はどう変わり、仕事がどう変わるかを想像し、業務を再構築していくことが、業務改革です。
 デジタルシフトにおける業務改革は、新しい業務のプロセスを明確にルール化することを目指します。なぜ、業務のプロセスのルール化が必要なのかといいますと、コンピュータは、人間ができないことを瞬時に実行しますが、大前提としてルールを与えることが必要だからです。「AIが全てやってくれるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、残念ながらそれはSF映画の世界の話で、現在では不可能です。コンピュータは、人間が設定した業務プロセスのルールを正確に実行することしか出来ないからです
 業務改革を進めていくと、現在の私たちの仕事は、俗人的な部分が多いことに気がつきます。もちろん今も企業にはルールがあります。人事規定、経理規定、稟議規定などのルールです。しかし、それらの規定は「やってはいけないことのルール」が多く、意思決定は、人間が担当し、ルーチンワークと言われる業務でさえ人間の判断で進んでいるのです。業務プロセスをルール化するとは、人間が実施している意思決定のプロセスを可能な限り共通ルールに落とし込み定義することなのです。

図4-2

 業務プロセスのルール化で気をつけなくてはいけない注意点があります。設定されたルールは常に進化させ続けなくてはいけないということです。顧客のニーズは常に進化し続けます。その進化に合わせて業務プロセスのルールも進化させ続けなくてはいけないのです。そのためには、自社で働く全ての人に設定したルールを浸透させ、常に自分達で修正を加えていいけるようにしなくてはいけないのです。

自社の現状を業務フロー図で整理し、自社を理解する

 業務プロセスをルール化するために、自社の現状業務をガラス張りにすることからスタートします。具体的には、自社の現状を業務フロー図で整理し、課題を洗い出していきます。業務フロー図とは、横軸に部署・担当を置き、縦軸に時系列を置き、業務の流れを表した図のことです。(下記参照)
業務フロー図を描くポイントは、業務だけでなく人の意思決定を表現することと、システムをひとつの部署として考えることです。

図4-1

 業務フロー図を描きすすめていくと、部署間の重なった仕事、逆に部署間の責任が不明確であったりすることが多いことに気がついたり、情報がうまく流れていないために何度も同じ説明をしていたり、ルーチンワークと言われている仕事でも人によってやり方が違ったりといったことに気がつきます。また、システム部署ごとに導入され、部署によっては活用しきれていないことにも気がつくでしょう。
 さらにある程度出来上がった時点で、全体を見てみると、自部署のことはもちろん理解していても、他部署のことは殆ど知らなかったことに気がつかされるでしょう。そうなってしまう理由は、企業は長い歴史の中で、各々の部署でより良い仕事にしようと業務改善を繰り返し、その結果、全体でみると部分最適となってしまい、全社として生産性を落としてしまうというパラドックス(逆説的現象)に陥ってしまうからです

課題を明確にして、未来のあるべき姿を描く

 業務フロー図を描き、全社視点で現状の業務を理解したら、課題の洗い出しとなりますが、既に全社視点で業務が見えてくると、課題はどんどん発見することができます。発見した課題は、業務フロー図に描き込むと同時に、課題管理表にまとめていきます。課題を洗い出した後、各々の課題に対し、その課題が発生している原因の追究し対策を考えていきます。ここでも気をつけるのは、部分最適にならない様にすることです。各々の課題につき原因を追究していくのですが、全体視点で見ていくと、一つの原因が複数の課題を発生させていることがあります。私の経験では、俗人的なマネージメントであったり、情報共有の不徹底などが原因になることが多いようです。
 そして最後に、未来のあるべき姿を描いていくわけですが、ここからは想像力が大切になります。その想像力は、二つの知識によってもたらされます。一つは、ここまでお話してきた全社視点で業務フロー図を描き、課題と根本的な原因を知っている事、そしてもう一つは、業務フロー図に一部署として描かれたシステムの進化の知識です。日々劇的進化を続けるITですが、進化するITは自社の顧客をどう変えていくのか、自分達の抱える課題をどう解決していけるのかを考えていくためには、ITの中身を知る必要はありませんが、ITのもたらす効果は知っておく必要があります。この二つの知識が揃ったとき、未来のあるべき姿を描くことはそんなに難しいことだはありません。 

図4-3

全社員参加で業務プロセスのルールを設定する

 業務改革の最後は、未来のあるべき姿を業務プロセスのルール落とし込んでいくことです。具体的には、未来の業務フロー図をつくることです。大切なことは、全社視点での課題が解決されていることと、システムを一部署として考え、新しいITを活用する業務フロー図を描くことです。完成した業務フロー図は、自社の顧客、会社風土、社員のスキルなどによって異なってくることでしょう。しかし、気をつけることは、全社員が何らかの形でこの作業に関わるようにすることです。人によって、デジタル推進チームのメンバーとして専任で携わる人、レビューに参加する人、そして多くの人はヒアリングされるだけの人だと思います。しかし、全社員で参加で業務プロセスのルールを設定するようにする配慮をすることで、全社に一体感が生まれ、その後の改革に弾みがついてくることでしょう。デジタル推進チームのリーダー、メンバーの方々は十分に配慮をすることが大切です。

 業務改革は、楽しい仕事です。業務改革は、「未来の顧客へのメッセージをつくる」仕事だからです。また、これらのことをトップをはじめ全社で考えることは思わぬ効果を生みます。それは、組織全体で未来を考えることで、組織に一体感が生まれてくることです。

第5回につづく

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鈴木 康弘(Yasuhiro Suzuki)
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。
著書: 「アマゾンエフェクト! ―「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか」 (プレジデント社) 

 
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