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第5回 BYODアンケートから見えてくる、スタッフの本音

BYODは既に始まっていた

 これまでの連載で、店舗マネジメントのDX化のためBYODが有効だと分かっていただいても、店舗で働くスタッフにとってはどうなのか?抵抗があるのではないか、と考える方も多いのではないでしょうか?そこで今回は実際にBYODを活用した時の、スタッフさんの声を確認してみたいと思います。
 ある小売販売業のお客様に、弊社の「はたLuck®︎」アプリを公式の業務連絡ツールとして導入していただきました。各スタッフの皆様にはご自身のスマホにダウンロードしてもらい、利用開始1ヶ月で全利用者(10代〜60代まで約200名)を対象とした「はたLuck®︎」導入前後の変化についてのアンケートを実施しました。
 まず、弊社のアプリ導入前に店舗内でどのように情報共有されていたかをアンケート結果で見ると、LINEやメッセンジャーなど私用のSNSアプリを使っている人が最も多く、次いで会話や朝礼、大学ノートといった順でした。第2回の記事でも触れているように、こちらの店舗でも、実際には個人のスマホと私用アプリで業務連絡が共有されていることが分かります。(図1.参照)つまり既にBYOD=個人のスマホを活用して業務をする状態にあったということです。

図1. 店舗内の情報共有ツール

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BYOD活用前後のギャップ

 それでは弊社のアプリ導入前後におけるBYODについての意識変化を見てみましょう。
 前述のように実際は自身のスマホを業務に使用していた訳ですが、BYOD活用について「はたLuck®︎」導入前はネガティブな意見が54%と多く、個人のスマホに業務アプリをダウンロードして仕事に活用することへの不安や抵抗感が大きいことが窺えます。しかし1ヶ月後、少しずつ運用に乗ってきた段階でのアンケート結果では、ポジティブな意見が78%と大きく増加しました。現場のスタッフもBYOD活用に漠然とした不安があるものの、実際に活用し始めてみると、その不安が解消され、ポジティブな印象に変化していったということです。(図2. 参照)

図2. BYOD導入前後の変化

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〈雇用形態別〉 
特に社員・パートのネガティブ意見の比率が、導入後に大きく変化している。

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〈年代別〉 
20代〜40代、60代はより前後の変化が大きい。

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意識に変化が起きた理由

 上記のような導入後の大きな変化が現れた理由について、以下のようなコメントがあがっています。

●遅番で朝礼に出れない時など出勤後すぐ情報が分かり大変よかった。
●連絡事項が文章で残り、読み返して何度も確認ができる。
●休みの日にLINEを気にしなくていい。
●大学ノートだけだと見落としてしまう事も見落とさなくなる。
●写真が同時にUPできるのもよい。
●口頭やメモの連絡より全員に伝わりよかった。
●社員だけでなくパート、アルバイトの方にも一括で共有できる。

 中でも、大学ノートや口頭伝達からBYODへの移行による情報の一斉共有や、記録に残り読み返せること、自分の好きな時間に連絡事項を発信・確認できるなどの利便性の向上が意識変化に大きく寄与していると思われます。またそれにより業務効率が良くなることを実感できたことが挙げられています。このようにBYOD活用は、実際に導入してみると「情報共有の利便性」と「時間的な柔軟性」などが漠然とした不安を上回っていくことが分かります。

店舗内コミュニケーションの変化

 次にBYOD活用でリアルなスタッフ同士のコミュニケーションについても変化があったのか、また、働き方がどう変化したかを聞いてみました。

●少しだけはたLuckの話題で仲良くなる。
●コミュニケーションを取る機会が増えた。
●相互確認で協力が生まれる。

 意外にも職場で実際に会ってコミュニケーションする機会が増えると回答がありました。業務アプリ上での情報共有が、店舗で会った時の「会話のネタ」になっているようです。

●はたLuckを積極的に利用する人は仕事も積極的になる。
●社員さんが伝えなきゃいけない情報を事前に知れたので、スムーズに作業を進められた。

 働き方の変化については、情報発信と取得が便利になることで、仕事に積極的に取り組めるようになったり、仕事がスムーズに行くようになったという意見が多くあがりました。

 このように店舗でのBYOD活用は、業務効率化と共に、スタッフの自主性を育み、リアルなコミュニケーションを増加させ、業務の遂行をさらに円滑にすることが分かります。

BYODは店舗サービス業のDX化による生産性向上の鍵

 実際のところ、日本でのBYODの活用は10%未満と、世界の主要国(平均)の50%と比較してかなり低い状況にあります。まだまだBYODに対する理解は得られていないのが現実です。よってBYODを導入するにあたってのルール作りやマネジャーの教育等が必須になります。個人のスマホを利用することで、いつでも・どこでも店舗とスタッフが繋がれる利点はあるものの、業務外の利用についてのルール(原則として店舗において勤務時間内での利用)の理解や、勤務時間外では通知をオフにして良いという休暇中のルール、通信環境の整備など、DXを推進する上で企業側も準備が必要です。そして、それができた会社から店舗内の業務効率化や従業員満足度の向上という恩恵を受けることができるのです。

 この連載を通じて、店舗サービス業のDXの鍵はBYODと発信してきました。DXの意義とは、スタッフの能力をデジタルの力で拡張することであり、それによって業務効率が上がることであり、さらに、仲間との協働が促進されることだと思います。そして、それが従業員満足度の向上になり、結果、企業の収益性を向上させることに繋がると思います。
 BYODは、スタッフの仕事の体験価値を高めます。私たちはそれをShift Worker Experience (シフトワークする人々の仕事の体験価値の向上)と謳い、店舗サービス業の生産性向上のキーワードだと確信しているのです。

★過去のこの著者の連載
第1回 サービス産業のデジタルシフトを目指して
第2回 BYOD活用における情報漏洩問題について
第3回 サービス産業の「収益構造」から考えるBYOD活用
第4回 BYODで可能になる、画像を活用したリモートマネジメント

ナレッジ・マーチャントワークス株式会社 代表取締役 染谷 剛史
1976年 茨城県生まれ。1998年 リクルートグループ入社、中途・アルバイト・パート領域の求人広告営業に従事。2003年 株式会社リンクアンドモチベーション入社(東証1部上場)、大手小売・外食・ホテルといったサービス業の採用・組織変革 コンサルティングに従事。2012年 執行役員就任、新規事業開発(グローバル事業立ち上げ、健康経営部門の立ち上げ)を経て、サービス業に特化した組織人事コンサルティングカンパニー長。2017年 ナレッジ・マーチャントワークス株式会社を設立、代表取締役に就任。
◆店舗改革プラットフォーム「はたLuck®️」 https://hataluck.jp/
◆染谷代表のブログ「SWX総研」 https://kmw.jp/column/

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ナレッジ・マーチャントワークス株式会社の代表取締役 染谷 剛史氏が、サービス産業において、店舗の生産性を高め、働く人々とお客様に喜ばれるお店づくりのためのデジタルシフト推進についてお伝えくださいます。

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